月刊ウェンディ「まつりづくりとまちづくり」愛知県一宮市での「志民」活動

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広島がベースで、名古屋市内などでも各戸配布されいてる月刊ウェンディに記事を提供しました。

月刊ウェンディ 2024年7月15日(第422号) 地域再生を考える第65回

「まつりづくりとまちづくり」愛知県一宮市での「志民」活動

以下、当初の原稿です。時間無くひとまずこれで。

NPO法人志民連いちのみや理事長 税理士 星野博(ほしのひろし)

1958年1月一宮市生まれ。市民イベント「杜の宮市」・コミュニティカフェ「com-cafe三八屋」・地ビール工房「一宮ブルワリー」等を運営。「一宮市市民活動支援センター」統括マネージャー。著書「私からはじまるまち育て」(共著)ほか

まつりづくりとまちづくり

愛知県一宮市での志民活動

 いつまでも知らんぷりを続ける「死民」でなく

 口だけは出すが何もしない「私民」でなく

 地域へ能動的に働きかけ続ける「志民」であろう

 谷岡郁子さんが20世紀末今世紀初頭に定義づけた「志民」概念を得て、私たちは後に「まつりづくり」と名づける様々なまちづくり活動を展開していきます。より多くの方に一宮ラバーとなっていただき、一宮的志民活動にご協力いただけるよう、NPO法人志民連いちのみやの活動の一部をお伝えします。

一宮って?…巨大繊維産業と地域性

 愛知県一宮市では、尾張国一宮真清田神社(ますみだじんじゃ)を地域の核としてまちが形成され、18世紀に始まるその門前市「三八市」(さんぱちいち)がやがて固着化して本町通(ほんまちどおり)商店街を形成していきます。木曽川の豊富な水、豊かで安定した濃尾平野、名古屋から間近で交通の要所として古くから繊維産業が勃興し、早くに毛織物が隆盛し始め、第二次世界大戦後の物資不足から復興期に莫大な富を地域へ内蔵していきます。繊維産業のヒトやカネを基礎に地域の商業性が確保され、社会資本が整備され、住民サービスも安定していました。

 やがて繊維を地場産業とした多くの地域同様、一宮の大繁栄は徐々に終焉していきます。しかし繊維産業の富の巨大さに頼ってきたせいか、その後ビジネスでもソーシャルでも新たな動きは弱いまま時代が過ぎていきます。過去の世代の大きなバブル蓄積と、現役世代の資源不足、支援不足、機会不足が続きます。

まつりづくりを、手づくりで

 一宮最大のイベントである「おりもの感謝祭一宮七夕まつり」は莫大な資金を使いつつ、繊維バブルのころの若年層も喪失し、地元民とりわけ若年層では関心の無い人が増えていました。そんな中1998年の七夕まつりの際に、真清田神社裏の公園にある土俵で野外無料コンサート「どすこいライブ」を開催しました。私たち自身が楽しい「七夕まつり」を、私たち自身が企画し準備し運営し、皆で一緒に楽しむ。土俵をステージとし、芝の観客席にはピクニックのように人々が三々五々集まって、音楽などを楽しみます。

 翌1999年の七夕まつりには商店街団体とともに、一宮市役所前の公園を無料休憩所・フードコート・野外ライブスペースとする「にぎわい広場」を始めました。また年間通して路上ライブ「ドコデモまちかどライブ」や、空き店舗を利用したアート展「テンポラリー」などのカルチャーイベントで「まつりづくり」を様々に展開していきます。

杜の宮市と、手づくり文化

 こうした活動を見た真清田神社飯田宮司から、神社境内を利用して文化発信をしていく事業をしないかと誘われ、2001年から始まったのが「杜の宮市」(もりのみやいち)です。手づくり、クラフトを主題とし、アートやクラフト作品等の作り手自身がブースを出し、直接来場者と話し合うことで、大量生産品の売買とは違う濃厚なコミュニケーションを積層します。アート・クラフト作品のみならず、体験教室や飲食、ライブ演奏もすべて手づくりがテーマです。

 「杜の宮市」は、資源ゼロから市民で紡ぎだし、初回は真清田神社境内を会場として5千人ほどの来場者でしたが、毎年継続し続け、やがて本町通商店街全体や周辺を会場として全長1kmを超え、出展者は全国から380ブースほど、来場者は3万人超、一日の場内資金移動3500万円超という規模に拡大しました。その規模でもテーマはやはりクラフト、手づくり文化です。

まつりから日常へ、ウォーカブルへ

 ヒトモノカネが無いまま公共地を活用し、私たち自身が望む地域社会を自分たちで生み出そうとする活動は、地域内外の同志と連携し、中間支援活動へと広がり、まちづくりNPO法人志民連いちのみやが設立されます。同法人は「一宮市市民活動支援センター」を受託運営し、コミュニティカフェ「com-cafe三八屋」やオリジナルコーヒーの開発、日本最小規模のクラフトビール工房「一宮ブルワリー」による一宮のビール復興、多目的公開空地「プリンスアレィ」の運営など、まつりから日常の常態へと活動を展開していきます。

 他方、一宮市ではTMOやまちづくり会社が不在のまま2020年にウォーカブル事業がスタート、翌年には志民連いちのみやを都市再生推進法人とし、安全安心歩きたくなる中心市街地の未来に向けて協働協力をしていきます。

 公共地を活用して自立的に市民が地域再生を模索してきた志民連いちのみやは、そのあがきや経験を地域へ還元しつつ、人間ファーストでオリジナルなウォーカブルタウンを目指して更に活動し続けています。